持続可能な開発目標(SDGs)に関する自発的国家レビューに関する意見

Submission to Policy Process
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公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、内閣官房と外務省が意見募集した「持続可能な開発目標(SDGs)に関する自発的国家レビュー(VNR)」に対して、パブリックコメントを提出しました。

SDGsの達成に向けた取り組みを着実なものとするためには、SDGsの実施をモニタリングし、レビュー(評価)し、その結果に基づいて取り組みの改善を図るプロセスが非常に重要であるため、SDGsを承認した国連加盟国は、自発的国家レビュー(Voluntary National ReviewVNR)という形で進捗を報告することが求められています。

VNRは毎年7月に開催されている「国連持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム(HLPF)」で発表が行われており、日本政府は20177月に最初のVNRを公表しました。そして今年のHLPFでの提出に向け、2回目のVNRが実施され、パブリックコメントが募集されました。

これを受け、IGESはこれまでの持続可能性に関する政策研究や事例調査などにおける知見をもとに提言を行いました。

●提言の主な内容

VNRレポートの構成・内容について】

  • 本レポートでは、政府のみならず市民社会や企業等、幅広いステークホルダーによるSDGsの取り組みが紹介されており、日本全体の活発な動きが把握できる点は高く評価できる。
  • SDGsの達成には分野横断的、統合的なアプローチが不可欠である。本レポートでは、SDGsの目標ごとに進捗が評価されており、目標間・ターゲット間、あるいは日本の8つの優先課題間の相互連関に関して十分に評価されていない。この点は円卓会議構成員による進捗評価にも同じことが言える。国連経済社会局(UNDESA)のVNRガイドラインで推奨されているとおり、相互連関に関しても取り組みと進捗をレビューし、VNRレポートに盛り込むべきではないか。
  • 2019年のSDGs実施指針改定の際に、SDGs達成には地球規模課題に対するシステムレベルのアプローチや社会の変革の加速が必要と指摘・認識されていた。しかし、今回のVNRレポートにはシステムレベルのアプローチや社会の変革に関して、どのように取り組んできたかが書かれていない。そうした議論や取り組みについても本レポートに書くべきである。

VNRのプロセスについて】

  • パブリックコメントを通じてVNRレポートに対する意見を募集していること自体は評価できるものの、レポート案ができてからの募集では、VNRの内容やVNRレポートの構成、VNRのプロセス自体について、(主要とはみなされていない)幅広いステークホルダーや一般市民の意見を効果的に拾い上げることは難しいのではないか。次回以降のVNRでは、円卓会議構成員や主要なステークホルダーのみならず、SDGs実施に関わる幅広いステークホルダーや一般市民の声を広く集めるため、1年くらい前からVNRの着手についてアナウンスし、段階的に意見を募集してはどうか。

【日本における今後のSDGsの進め方について】

  • 日本は国レベルのSDGsの目標・ターゲット・指標を設定し、その達成に向けて行動を加速することが必要である。2030アジェンダでは第55項目において、各国はSDGsを踏まえつつ、置かれた状況も考慮して独自のターゲットを定めることを求めており、特にSDGsの取組が進んでいるフィンランドやドイツ等では広く行われている。日本で国レベルの目標・ターゲット・指標を設定する前提として、まずは日本として目指す姿を構想し、その実現に必要なシステムレベルのアプローチや社会変革に関する議論を国全体で深めることが必要である。こうした議論は幅広いステークホルダー、特に若者、脆弱な立場にいる人々、アカデミアを巻き込むことが重要である。
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