20周年
記念
武内 和彦

ご挨拶

 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、1998年4月に日本政府のイニシアティブと神奈川県の支援により、地球環境時代を切り拓くための実践的かつ革新的な政策研究を行う機関として発足しました。その使命は、設立憲章にも、急速な経済発展に伴い環境問題が深刻化するアジア太平洋地域における持続可能な開発の実現を目指し、現在の物質文明の価値観や価値体系を根本的に問い直し、新たな人類の営みのあり方や新たな文明のパラダイムを創造し、これに即して経済社会の仕組みを再構築することとして示されています。
 IGESは、本年3月末をもって設立満20年を迎えましたが、その時々の政策課題を的確に捉えた戦略研究を行い、その成果をもとに実効性ある提言を行うことによって政策の形成に貢献すべくその活動を進めてきました。この間、IGESの設立、運営に一方ならぬご尽力を賜った関係の皆様に改めて御礼申し上げます。
 現在、国際社会では、2015年に採択された2つの歴史的な合意-パリ協定及び持続可能な開発目標(SDGs)を含む持続可能な開発のための2030アジェンダ-をもとに、様々な取り組みが進んでいます。しかしながら、このような動きと社会経済システムの転換に必要なアクションとの間には、まだ大きな隔たりがあるといわざるを得ません。変革を加速させていくためには、従来の国家主体に加え、都市・地域社会、企業、金融機関といった非国家主体のアクター間の連携を一層深化させ、変革のための行動を加速していく道筋を共同で設計・実施していく必要があります。
 IGESは2016年に中長期戦略を策定しておりますが、そこでは、2025年までの10年を持続可能な世界に変わるための「行動の10年」と捉え、プラネタリー・バウンダリーが十分に尊重され、グリーン経済が柔軟に適用され、人々の福利(human wellbeing)が着実に向上し、持続可能でレジリエントな、かつ共通で包括的なアジア太平洋地域と世界のあるべき姿を追究することを大きな目標としています。また、IGESは、自らを、持続可能な社会への移行を促進する「チェンジ・エ-ジェント」と位置づけ、これまで積み重ねた各国政府、地方自治体、国際機関、研究機関、企業、NGOそして市民の皆様との連携をさらに深化させながら、科学的知見に基づくエビデンス・ベースの政策形成のための研究を進めるとともに、国際的なアジェンダ設定や議論のフレームワーク設定に貢献していきたいと考えております。
 IGESの研究活動に対する変わらぬご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
理事長 武内 和彦