東南アジア諸国における参加型森林管理の制度と主体: 森林社会学からのアプローチ

In Ringyo Keizai Kenkyu (林業経済研究)
Volume (Issue): Vol.46 No.1
Peer-reviewed Article

『林業経済研究』Vol.46 No.1(2000年3月発行)より転載

1970 年代後半から熱帯諸国では、地域住民の福祉の向上を目的とする林業が試みられてきた。それは、フォレスターたちが従来の産業的林業の政策理念のもとでは木材の永続的生産が達成できないことに気づきはじめたからである。このような林業活動をさす用語として社会林業やコミュニティー林業が用いられてきた。当初この両者は、農山村開発のための林業活動に地域住民が参加する状態を指す用語として用いられた類似する概念であった。定義の詳細は加藤(1999)に譲るが、筆者の見るところ、最近では両者の使われ方が分化してきている。つまり、社会林業が個人ベースの活動(例えば農家林業)を含む包括的な活動に対して用いられるのに対して、コミュニティー林業は共同的な活動に対して用いられるのである。
政策理念としても用いられる包括的な概念である社会林業は、2つの構成要素から成り立っている。第一は、森林・林業セクターにおける「参加型森林管理」である。そして
第二は、森林・林業セクター外における農山村開発のための活動、すなわち1)道路、集会所、学校、診療所などのインフラ整備、2)農業技術の普及、3)様々な所得源の創出、である。しかし、もしも参加型森林管理の要素を欠き後者のみであるならば、もはや社会「林業」と呼ぶ必要はなく、一般の農山村開発そのものとなる。つまり、参加型森林管理は社会林業の核心を成す活動として位置づけられるべきものなのである。

本稿では議論の対象を参加型森林管理に絞る。そして、東南アジア諸国における制度的特徴を明確にすることを主要な目的とする。そのうえで森林管理の実態から学ぶべき重要な視点を確認し、住民主体の森林管理制度に関する今後の研究の方向性を示したい。

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